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相続トラブル

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【相続の新常識】「うちには関係ない」が一番危険!

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はじめに:なぜ今、相続がこれほど重要なのか

2025年、日本は静かな、しかし強烈なインパクトを持つ歴史的な転換点を通過しました。1947年から1949年に生まれた「団塊の世代」約800万人が、全員後期高齢者(75歳以上)となったのです。これは単なる人口統計上の変化ではありません。戦後の高度経済成長を支え、日本の総個人資産の多くを保有する世代が、一斉に「相続の入り口」に立ったことを意味します。

今後10年から20年にわたり、日本は史上類を見ない「資産の巨大な流動化」を経験します。かつて相続は、一部の資産家や富裕層だけの特別な出来事でした。しかし今や相続は「誰にでも等しく訪れる日常」であり、同時に「家族関係を壊すリスクを秘めた、最も身近なトラブルの種」へと変貌しています。

本記事では、この時代の大きな波に飲み込まれないために現代の「相続の新常識」について解説します。

1.データが示す「相続の急増」という現実

相続の増加は、すでにデータとして明確に現れています。

国税庁の統計によると、直近では年間で約160万人近くが亡くなっており、そのうち相続税の申告が必要だった方は約16万人以上にのぼります。10年前と比べると被相続人の数は1.2倍以上に増えており、相続件数が着実に増加していることがわかります。

さらに注目すべきは、相続税の課税割合の変化です。2015年(平成27年)の税制改正で相続税の基礎控除額が引き下げられたことにより、今では課税対象者の割合は改正前のおよそ3倍にまで増えました。かつては「富裕層だけの問題」とされていた相続税が、今や10人に1人が直面する身近な問題となっているのです。

この増加の背景にあるのは、亡くなる方が増えているという人口の変化だけではありません。地価や株価の上昇によって相続財産の評価額が高まっていることも、課税件数の増加を後押ししています。大都市圏では、自宅の土地を相続しただけで相続税の対象になるケースが急増しており、「うちには関係ない」という安心感は、もはや根拠のないものになりつつあります。

2.相続トラブルは「普通の家庭」で起きている

相続件数の増加とともに深刻化しているのが、相続トラブルです。

最新の司法統計によると、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割をめぐる争いの件数は、ここ20年余りで約1.7倍に膨らんでいます。年間の件数は今や1万9000件を超えており、増加傾向は続いています。

ここで重要なのが「誰が」争っているか、という点です。裁判所で争われた相続案件の約4分の3は、遺産額5,000万円以下の家庭によるものでした。「うちはたいした財産がないから安心」という感覚もまた、危険な思い込みです。相続争いは、一部の資産家ではなく、ごく一般的な家庭で日常的に起きている問題なのです。

なぜ普通の家庭でも争いが起きるのか。その最大の原因は「不動産」です。相続財産の7割以上が土地と現金で構成される中、特に不動産は分割しにくい資産です。兄弟姉妹が複数いる場合、自宅を誰が引き継ぐかという問題は感情的なしこりを生みやすく、遺言書がなければ全員参加の遺産分割協議を経なければ前に進めません。話し合いがまとまらなければ、裁判所での調停・審判へと発展し、家族関係に深刻な亀裂が生じることもあります。

項目 過去の認識 現代の新常識
相続税の対象 一握りの大資産家 都市部に自宅を持つ
一般的な家庭
申告・納税 一部の人だけの悩み 10人に1人が
申告する時代
トラブル発生率 財産が多い家のみ 遺産額5,000万円以下の
家庭が約75%
対策時期 相続発生後 認知症になる前の
「生前」が必須

3.高齢化が相続を複雑にする「二つの問題」

資産の世代交代が加速するなかで、相続をさらに複雑にしているのが長寿化に伴う二つの問題です。

一つ目は、認知症リスクの増大です。

平均寿命が伸び、高齢者人口が拡大する中で、認知症患者数も増加の一途をたどっています。相続において認知症は大きな障壁となります。相続人の一人が認知症を患っている場合、その人は通常、遺産分割協議に単独で参加することができません。成年後見人の選任が必要となりますが、家庭裁判所が後見人を選ぶため、必ずしも家族が後見人になれるわけではなく、弁護士、司法書士など専門職が選任されれば毎月数万円の報酬が発生し、本人が亡くなるまで続きます。相続の手続きが何年にもわたって停滞するケースも珍しくありません。

被相続人(亡くなった方)側の認知症も同様に深刻です。認知症を発症した後では、有効な遺言書を作成することが困難になります。生前に何も手を打たないまま認知症が進行すると、本人の意思とはかけ離れた形で遺産が分配されるリスクが生じます。

二つ目は、「相続人の高齢化」という見落とされがちな問題です。

日本では親の長寿化が進んでいるため、相続する側の子どもがすでに60〜70代に達しているケースが増えています。自分自身の老後や健康問題を抱えながら、親の相続手続きを進めなければならない時代になっています。体力的・精神的な余裕が限られた中で、複雑な手続きや親族との協議を進めることの難しさは、容易に想像できるでしょう。

4.「空き家」という相続が生む社会問題

資産の世代交代が及ぼす影響は、個人の財産にとどまりません。社会インフラにまで波及しているのが「空き家問題」です。

国土交通省の調査によると、空き家の取得理由として最も多いのは「相続」であり、全体の半数以上を占めています。団塊世代が親世代から取得した実家が、今度は次の世代へと相続される「空き家の連鎖」が加速しています。

相続した家を活用・売却せずに放置すると、固定資産税の負担が続くうえ、建物の老朽化が進み、近隣への悪影響(害虫発生・景観悪化・防犯上のリスク)も生じます。首都圏では65歳以上の高齢者だけが住む「空き家予備軍」の持ち家が多く、今後さらに深刻化することが見込まれています。

対策の一つとして、2023年4月から「相続土地国庫帰属制度」が始まりました。一定の条件を満たした土地を国に引き渡すことができる制度ですが、活用できるケースは限られており、根本的な解決策にはなっていないのが現状です。

今、私たちに求められること

こうした相続をめぐる課題は、「自分とは関係ない」と傍観できる問題ではありません。相続する側にとっても、される側にとっても、早期の備えが不可欠な時代になっています。

トラブルを防ぐ最善の手段は、遺言書の作成です。しかし遺言書を準備している人はまだ少数にとどまっており、家族間での事前の話し合いも十分でないケースがほとんどです。「家族だから大丈夫」という楽観は通用しません。財産がさほど多くない家庭でも、不動産一つをめぐって争いに発展するケースが現実に存在しているのです。

また、相続税の申告期限は「相続の開始を知った日の翌日から10か月以内」と定められています。期限を過ぎると延滞税や加算税が課せられるため、相続が発生してから慌てて動くのでは遅すぎます。特に不動産を相続する場合、売却の検討から実際の引き渡しまでに数か月を要することを考えれば、実質的に動ける時間はさらに限られます。

資産の世代交代という大きな波は、すでに始まっています。家族で相続について話し合うこと、そして専門家(税理士・弁護士・司法書士)に早めに相談することが、この時代を乗り越えるための第一歩です。「いつか考えよう」ではなく、「今日から考える」姿勢こそが、家族と財産を守る最大の備えとなります。

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